辛辞苑
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日常生活
起床 - きしょう
起床とは、ベッドという名の安住の地から追放される儀式。早朝の静寂を破り、社会という迷宮への扉を開く行為とも言える。人類最大の悪習である「残業」の前哨戦を告げるベルのようなもので、布団への未練をあらわにする瞬間である。毎日繰り返されるこの苦行が、我々の自由意志と睡眠欲の脆弱さを映し出している。
午後の眠気 - ごごのねむけ
午後の眠気とは、昼食後の血糖値上昇と経済効率主義の共演が生んだ、現代オフィスの無言の抵抗。会議室の椅子は滑り台に、プレゼンテーションは子守唄に変わる。抵抗する意志を持つ者は、コーヒーという名の偽薬にすがるしかない。
水分補給 - すいぶんほきゅう
水分補給とは、体内の砂漠化を一時的に解消する行為。会議中の甘いお茶や、運動後のスポーツドリンクは神聖な儀式のように扱われる。声高に「水分補給を忘れずに」と叫ぶ健康オタクと、その圧に耐える同僚との静かな戦いが繰り広げられる。実際の効果はさておき、水を飲む行為は安心と自己管理欲求を一瞬満たしてくれる幻想的な薬である。
徒歩 - とほ
徒歩とは、最も原始的かつ無料の移動手段として称賛されながら、実際には時間と労力という高価な代償を要求する儀式である。一歩ごとに文明の便益からほんの少しずつ剥ぎ取られ、己の怠惰と対話する場となる。健康志向を口実に、誰もが一度は足を向けながらも、信号と坂道の前では謙虚さを思い出す。便利な乗り物を選ぶ勇気のない者が、自己満足と罪悪感を交互に味わう時間。都市の景色を五感で味わうと言うが、その本質は自己限定のツアーに過ぎない。
芳香剤 - ほうこうざい
芳香剤とは、空間に化学の仮面を被せて、現実の悪臭という真実をそっと押し隠す小さな魔術師である。噴射ボタンを押すたびに、無臭への望みと人工的な香りの戯れが静かに幕を開ける。消えないゴミの匂いに勝ったと思った瞬間、新たな化学の嵐が鼻腔を支配する。自然な香りへの郷愁を巧みに操りながら、便利さと環境負荷を天秤にかける皮肉な発明品だ。使用者はその甘い罠に心地よく誘われ、第2、第3のスプレーを手放せなくなる。
目覚まし時計 - めざましどけい
目覚まし時計とは、安眠という名の敵を無慈悲なベル音で討伐する小型の専制者である。夜の暗闇に潜む眠気を容赦なく攻撃し、日の出前に人類の自由意志を奪う。主人の意志ではなく、誤作動と目覚ましアラームの強迫観念に支配される日々を象徴する。朝の憎悪と共に、説教じみた音色を繰り返し鳴らし、起きるか再度眠るかを悩ませ続ける。その存在意義は『起こす』以外にないが、その行為はほとんどの人間にとって一種の拷問である。