辛辞苑
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監督 - かんとく
監督とは、自らは手を動かさず部下の努力を成果として報告する名誉職であり、忙しい上司にとって好ましい鈍痛的存在である。部下の疑問は『あとで報告をまとめるから』と先延ばしし、自身の裁量を示すために承認印を虎の子のように抱えている。会議では半歩前に移動しつつ、参加者の発言を自分の手柄になるかどうかで取捨選択する。必要以上に細部に口を出し、人々を同時に動かすことで『統制』という名の幻影を振り撒く達人である。彼らにとって、現場の混乱は自分の存在価値を示す格好の舞台装置に他ならない。
看護師 - かんごし
看護師とは、患者の痛みと寝不足を同時に管理する夜の守護者。点滴の滴る音に耳を澄ませ、電子カルテとにらめっこしながら生死の境を泳ぐ。24時間戦い続け、感謝の言葉はおろか休憩室の椅子さえ奪われる。命を預かる重圧を背負いながら、笑顔という名の仮面を外さないプロフェッショナル。ヒーローでも聖職者でもなく、ただ次回の配薬を心配する人間だ。
看病 - かんびょう
看病とは 病人の苦悶を監視しながら 自らの疲労を増殖させる行為である 患者の呻吟は同時に看病者の忍耐力を計測するエコーとなる かけがえのない献身と称されるが しばしば暗黙の負債を伴う 社会的徳の象徴と こっそり恐れられる苦行との二面性を併せ持つ
管轄 - かんかつ
管轄とは、自らが得意げに引いた境界線の内側だけを守り、境界線の外で起きる混乱には一切責任を負わない名誉ある芸術である。法の前に平等を語りながら、現場では机上の地図を振りかざし、問題が及ぶと『それは私の管轄外』と高らかに宣言する。実際に必要なのは権限ではなく、責任から逃れるための巧みな言い訳である。責任を負うよりも、無謬の境界線を描く方がずっと安全だ。誰も手を出せない『管轄外ゾーン』は、行政・企業・家庭の三大舞台で華々しく活躍する。皮肉なことに、その境界線の外でこそ、本当の問題は静かに育つ。
管理栄養士 - かんりえいようし
管理栄養士とは、カロリーと格闘しつつ人々の罪悪感をマネジメントする職業である。摂取すべき野菜の量を声高に説きながら、自身のランチは空腹との深い対話の末にサラダであることが多い。ビタミン不足の恐怖を煽りつつ、チョコレートの手渡しを断るその姿は、まるで健康の番人と呼ぶにふさわしい。顧客の「あと一口」を封じることで、自己肯定感を奪い健康を与える奇妙な錬金術師でもある。
管理責任 - かんりせきにん
管理責任とは、組織の足並みが乱れたときに最も輝く、偽善の装飾品である。誰かのせいにする舞台裏で、全方位を掌握したかのように振る舞い、実態は温室の胡蝶蘭のごとく手厚く保護された言葉にすぎない。叱責の矢が飛ぶときには盾となり、称賛の風が吹くときには真っ先に飛び出し、その重みを最も薄く感じさせる軽妙なアートだ。かつては信頼の証ともされたが、現代では誰もが避けたい呪文となった。
管理組合 - かんりくみあい
マンション住民を代表すると称し、会議の場を借りて話し合う義務を負わせながら、最終的には総会資料の修正と口論の盛り上げ要員を担当する組織。共用施設の運営を委ねられつつ、費用負担の説明会では勝手に話題を逸らす高度なスキルを発揮する。秩序と公正を掲げる一方で、実際には似た者同士の談合と多数決至上主義を行使し、住民の連帯感を摩耗させる。組織の存在意義は安全と快適を守ることにあるはずが、そのプロセスで住民の忍耐力を試す試金石となっている。
簡易裁判 - かんいさいばん
簡易裁判とは、本来何ヶ月もかけて専門家が論じるべき問題を、忙しい大人たちの都合に合わせて数十分で決着させる茶番である。そこには、法の公正さと迅速さという二つの美徳が、まるでお見合い写真のように無理やり結婚させられている。原告も被告も、コーヒー片手に役所のロビーで「さあ、正義をお見せしましょうか」と笑顔を振りまく。判決文は小説には程遠い事務的な一行で終わるのが流儀だ。
緩やかな連合 - ゆるやかなれんごう
緩やかな連合とは、共通の目的を掲げつつも具体的な責任を曖昧に放置する、政治家が好むマキシマム労力ゼロの合意形態である。互いに押し付け合う保護と自由の狭間で揺れ動き、最終的には何も決まらず時間だけが浪費される。まるで会議室で温泉に浸かっているかのような、ぬるま湯感覚を与える集団幻影だ。使いどころを誤ると、結局誰の安全も保証されない砂上の楼閣となる。
緩和 - かんわ
緩和とは、破滅を先延ばしにしつつ責任を曖昧にする魔法の言葉。気候危機も企業の負債も、さも軽く片付くかのように語り、実は何も解決しない詭弁。用いるほどに本質から遠ざかり、聴衆の良心を眠らせる万能の睡眠薬。真の解決よりも、イメージの演出を重んじる人々の甘い言葉尻だ。
緩和ケア - かんわけあ
緩和ケアとは、治癒の名目から解放された苦痛という泥沼を、穏やかな言葉と麻酔薬で取り繕う技術。死の淵に立つ者に、苦痛はまだ続くと知らせる優しき嘘を囁く。患者の苦悶を「科学的配慮」というつむじ風でそっと流し、家族の後ろめたさを鎮める社会的潤滑剤。最期の時間をできるだけ穏やかに見せかけるプロの演出。効能は痛みの軽減、効果は医療者の自己満足。
肝炎 - かんえん
肝炎とは、沈黙の臓器・肝臓が炎上し始めたサインを、発熱と倦怠感で叫ぶ病である。自己管理を怠った結果起こる演出かと思いきや、ウイルスやアルコールが主役で決して無視できない。治療を先延ばしにすると『沈黙の臓器』が文字通り黙秘を続け、最悪の結末を用意してくれる。予防は口うるさい医師と定期検診の賜物だが、誰もが面倒と感じる自己管理の欠片を要求する。
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