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反人種差別 - はんじんしゅさべつ

反人種差別とは、肌の色や文化を理由に他人を評価しないと唱えながら、自らの無意識の偏見には目をつむる精神の二重奏である。その声高な正義の主張はしばしば、自分の特権を温存するステージ衣装となる。多様性を愛すると言いながら、異なる視点を黙殺する会議室の空気が真実を物語る。正義の象徴を手にした者ほど、その象徴を守るために沈黙の鎖を他者に課しがちである。理想を掲げるほど、現実の行動は曖昧に霞んでいく皮肉な芸術作品だ。

非同期I/O - ひどうきあいおー

非同期I/Oとは、応答を待たずに次の処理へ逃げ出すプログラム界の放置芸。CPUの手が空く時間という幻想を生み出し、結果として開発者には未知のバグという贈り物を届ける。設計書には待つ必要なしと書かれ、運用では「いつ返ってくるの?」と責められる矛盾装置。ノンブロッキングと聞くたびに、システムが人類を待たせる言い訳を学習した気分になる。優雅さの裏には、待ちぼうけと混乱の劇場が広がっている。

美学 - びがく

美学とは、何が美しいかを永遠に議論し続ける言葉遊び。見る者のプライドをくすぐる装飾語として機能し、実践を伴わずに高尚さを保証する。画商と評論家にとっては商売道具、学生にとっては宿題の材料に過ぎない。時に、キャンバス上の五ミリの筆跡に人生の真理を垣間見た気分にさせる魔術として働く。結局は、学問の名で幻想を売る高級ギミックである。

評価 - ひょうか

評価とは、組織が成果と怠惰の差を測り、称賛と罵倒を均等に配分する神聖な儀式である。期末になると、数字にもとづかない感情が無数に飛び交い、紙の束が人間の価値を決める。真の目的は評価ではなく、その結果をネタに会議を盛り上げることである。だれもが公平を望みながら、その公平を信じる者こそ最も疑念を抱く。

不可知論 - ふかちろん

不可知論とは、神の有無を問う前にあらゆる答えを保留する高等戦略であり、確信という煩わしい感情を知らない振りでかわす技術である。信じるでも否定するでもない姿勢を蔑まれつつ、自らの無知を誇る優雅な立場。理屈をこねることで、何も知らないことを巧妙に隠蔽する口実の宝庫だ。主張がないことを主張しつつ、議論の出口を永遠に閉ざす一閉鎖空間。そう、不可知論者とは「知らない」と吐けばひとまず勝ちの、真理の問いを凍結させる凍結魔である。

不在者投票 - ふざいしゃとうひょう

不在者投票とは、選挙の日にわざわざ現地に足を運ぶことを拒み、自宅や指定窓口から票を投じるという一種の遠隔操作投票法である。投票所の行列を回避しつつ「参加していますよ」というアピールだけは忘れない、便利と怠惰の結晶。公平性をうたう一方で、郵送中の紛失や二重投票の奇跡的な発見によって、某党の課題提供マシンとしても重宝される。結果はあくまで「有権者の権利行使」という建前の下、紙袋と封筒が交錯する郵便局の裏舞台で決定される。もしも票の行方が気になるなら、ポストに祈りを捧げるがよい。

不条理主義 - ふじょうりしゅぎ

不条理主義とは、人生に意味を求める努力が虚無の茶番に過ぎないと高笑いする思想である。信者は真剣に問いかけながらも、答えが見つからない滑稽さを愛でる。目的を掲げるほど深まる無意味の深淵を、まるで観客席から楽しむコメディアンのように眺める。救済は約束されず、絶望こそが信仰の対象となる点が最大の魅力だ。結局は意味を探し続ける限り、人類は自らの舞台上で滑稽なピエロを演じさせられる。

芳香剤 - ほうこうざい

芳香剤とは、空間に化学の仮面を被せて、現実の悪臭という真実をそっと押し隠す小さな魔術師である。噴射ボタンを押すたびに、無臭への望みと人工的な香りの戯れが静かに幕を開ける。消えないゴミの匂いに勝ったと思った瞬間、新たな化学の嵐が鼻腔を支配する。自然な香りへの郷愁を巧みに操りながら、便利さと環境負荷を天秤にかける皮肉な発明品だ。使用者はその甘い罠に心地よく誘われ、第2、第3のスプレーを手放せなくなる。

亡命 - ぼうめい

亡命とは、自ら望んで不安定な立場を選びつつ、他者の同情と無関心を同時に味わう外交的演劇である。かつては英雄譚の幕開けとされたが、今や書類と面談の迷路を抜けなければならない。隣国の門番は歓迎するふりをし、内心では次なる難局を温めている。亡命者は逃亡者から難民、そして政治アクティビストへと転身を強いられるものの、その称号に伴う特権はほとんどない。新天地に辿り着く頃には、故郷と祖国の狭間でアイデンティティの喪失へと誘われるのが常である。

無神論 - むしんろん

無神論とは、万能の解答を求める心を一切保留席に回し、空席だらけの神座を眺める思想である。死後の保証サービスがないことを知りながら、生と死の間でひとり苦笑する覚悟を背負う。物語の主要キャラクターが不在でも続く物語を選び取った人々とも言える。倫理と不安の家具を自ら搬入し、運搬するシンプルかつ永遠のDIYプロジェクト。具体例: 彼は来世の貯金を放棄しつつ、今日のコーヒー代は真剣に計算していた。

木彫 - きぼり

木彫とは、無垢の木片に人間の欲望を刻み込み、やがて無意味な装飾品を量産する試練である。職人の忍耐は微細な彫り跡となり、完成した瞬間から埃との共存を余儀なくされる。自己表現の名の下に材木を虐殺し、観賞者の視線を釘付けにする未知なる残酷劇。作業過程の苦悶こそが歓喜であり、完成品はただの見せかけに過ぎないという残酷な真実を教えてくれる。

木版画 - もくはんが

木版画とは、硬い木片を彫刻刀で削り、インクをこすりつけた後、紙の肌に無造作に押し付ける贅沢な苦行である。一枚一枚の僅かなズレに、職人の執念と敗北がにじむ。技法の古さは“伝統”という名の言い訳に過ぎず、現代人には過剰な労力を強いるアナログの亡霊とも呼べる。大量生産の影で、木屑とインクにまみれた手から逃れられない芸術家の嘆きが聞こえてくる。
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