辛辞苑
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#写真
ホワイトバランス - ほわいとばらんす
ホワイトバランスとは、撮影者が色の真実から目を背けるための魔法の呪文。光源の色温度を気にする人を「玄人」と呼び、気にしない人を「無頓着」と分類する二元論を支える便利な単語。暖色も寒色も、自分好みのムードにすり替える万能フィルター。でも終わりなき「正しい白」を探し続ける虚無の儀式でもある。
建築写真 - けんちくしゃしん
建築写真とは、コンクリートの無機的な立面をまるで宗教的聖遺物のごとく神聖視し、光と影の祭儀で美化する営みである。空っぽのオフィスビルも、写真家のフレームを通せば未来都市の聖堂へと昇華する。だがその眼差しは、建物が内包する人の営みや老朽化の現実を切り捨て、“完成品”という虚構を演出する。透き通るガラス張りのファサードは、設計者の野望を称賛しつつ、施工ミスの影を隠蔽する舞台装置となる。真に写し出されるのは、建築美という名の虚飾と、維持管理の過酷さを忘れさせる魔術である。
絞り - しぼり
絞りとは、カメラレンズに設けられた光の入り口を調整する装置であると豪語しながら、撮り手の手ブレや天候におののきながら裏切る小悪魔のような機構である。数値が小さくなればなるほど明るさを確保すると自信満々に宣言しつつも、被写界深度という名の魔境を一瞬で変化させる。逆に数値を上げれば隅々までクリアにすると豪語しながらも、暗さを言い訳にISOとシャッタースピードの調整バトルを開演させる。初心者は絞りをいじることで一攫千金のプロ気分を味わい、上級者はその気まぐれな変化に翻弄され続ける。結局、絞りの最適解は現像ソフトかSNSのフィルターに委ねられ、真実は闇の中に葬られる。
天体写真 - てんたいしゃしん
天体写真とは、無数の星々をレンズの向こう側に閉じ込めると称するが、実際は長時間露光と三脚との果てしない格闘を美化する趣味である。暗闇に向き合い続けるのはロマンの追求か、それとも光害に怯える夜の修行か。完成形を待つ時間は、期待と機材トラブルという名の苛立ちが交互に訪れる茨の道。結局、撮れた写真はSNSで発表するための飾りと化し、銀河の神秘は#星好きアピールの小道具に過ぎない。
野生動物写真 - やせいどうぶつしゃしん
野生動物写真とは、小鳥やライオンといった未懐柔の被写体を追い回し、SNS上の「いいね!」を餌に自然を商品化する行為である。そこでは動物の自由よりも、カメラの性能と撮影者の自尊心が優先される。撮影者はセルフィー棒を片手に、探究心を名目に動物の迷惑を顧みずレンズを向ける。最後に残るのは、残像のように薄れていく「野生」の本質と、バイラルな写真だけである。