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#哲学

アニミズム - あにみずむ

アニミズムとは、石ころや草木にまで魂を押し付けて安心したい人間の心理的亡霊である。人は万物に霊性を見出すことで、制御不能な自然を擬似的に掌握した気分になる。木に語りかけ、山に祈り、さらにはパソコンにまで人格を付与するのは、この信仰が人間の無力感をやんわりと包み込む機構だからだ。批判的には、ただの偶像崇拝の亜種に過ぎないという鏡映しの真理がある。だが、祈りの相手がカップラーメンの湯切りだったとしても、心は安らぐ。

価値論 - かちろん

価値論とは、何が尊く、何が取るに足らないかを延々と議論する遊戯である。自己顕示欲のついでに倫理や美意識が引きずり出され、まるで無限ループする哲学カフェのように時間を溶かす。誰もが自分の価値観だけは唯一無二だと豪語する一方、他人の価値観には容赦なくツッコミを入れる。市場では値札が全能の証だと崇められ、日常では心のモノサシが常に振り回される。結論が出ないとわかっていても、やめられない止まらない価値のジャグリング。

禅 - ぜん

禅とは、静寂の中にすべてを見出そうとする真剣勝負の暇つぶしである。坐禅の間、雑念はむしろスターとなり、あなたの視線を一身に集める。言葉を減らしつつ心は増える矛盾。それでも深呼吸の一瞬が『悟り』という幻をちらつかせる。

美学 - びがく

美学とは、何が美しいかを永遠に議論し続ける言葉遊び。見る者のプライドをくすぐる装飾語として機能し、実践を伴わずに高尚さを保証する。画商と評論家にとっては商売道具、学生にとっては宿題の材料に過ぎない。時に、キャンバス上の五ミリの筆跡に人生の真理を垣間見た気分にさせる魔術として働く。結局は、学問の名で幻想を売る高級ギミックである。

不可知論 - ふかちろん

不可知論とは、神の有無を問う前にあらゆる答えを保留する高等戦略であり、確信という煩わしい感情を知らない振りでかわす技術である。信じるでも否定するでもない姿勢を蔑まれつつ、自らの無知を誇る優雅な立場。理屈をこねることで、何も知らないことを巧妙に隠蔽する口実の宝庫だ。主張がないことを主張しつつ、議論の出口を永遠に閉ざす一閉鎖空間。そう、不可知論者とは「知らない」と吐けばひとまず勝ちの、真理の問いを凍結させる凍結魔である。

不条理主義 - ふじょうりしゅぎ

不条理主義とは、人生に意味を求める努力が虚無の茶番に過ぎないと高笑いする思想である。信者は真剣に問いかけながらも、答えが見つからない滑稽さを愛でる。目的を掲げるほど深まる無意味の深淵を、まるで観客席から楽しむコメディアンのように眺める。救済は約束されず、絶望こそが信仰の対象となる点が最大の魅力だ。結局は意味を探し続ける限り、人類は自らの舞台上で滑稽なピエロを演じさせられる。

無神論 - むしんろん

無神論とは、万能の解答を求める心を一切保留席に回し、空席だらけの神座を眺める思想である。死後の保証サービスがないことを知りながら、生と死の間でひとり苦笑する覚悟を背負う。物語の主要キャラクターが不在でも続く物語を選び取った人々とも言える。倫理と不安の家具を自ら搬入し、運搬するシンプルかつ永遠のDIYプロジェクト。具体例: 彼は来世の貯金を放棄しつつ、今日のコーヒー代は真剣に計算していた。

来世 - らいせ

来世とは、現世の無能さと無責任さを正当化するための最高のマーケティングキャンペーンである。行いの悪さを棚上げにし、死後の報酬を担保に付け加えることで、自己満足と逃避を同時に叶える。実体のない未来を餌にして現実の改善を先送りにさせる、詐欺師好みの発明品だ。信じる者には無限の希望を、批判する者には格好の皮肉を提供する、あらゆる議論の万能錠。

錬金術 - れんきんじゅつ

錬金術とは、鉛を金に変える夢を語りながら、同時に財布の中身を減らす詐欺的技術である。中世の陰鬱な実験室で生まれたその神秘学は、今日では怪しげな投資話と肩を並べる信用を得ている。賢者の石を探し求めた術師たちは、溶鉱炉の熱に煮えたぎりつつ虚無を掘り起こしてきた。自己超越を標榜しながら、実際には破産と優越感を交互に味わう精神的サウナである。

贖罪 - しょくざい

贖罪とは、自らの過ちを過去の悪行カタログに追加しつつも、神や社会に“清算済み”のスタンプを押してもらう行為である。それは悔恨の証という名の自己満足であり、同時に他者からの視線を「もう許された」という安心感に変える交換チケットだ。宗教儀礼から会社の反省文まで、汎用性に満ちた万能ツールとして幅広く流通する。最大の魅力は、実際の行動ではなく言葉と形式だけで心の棚卸しを完了できる“手軽さ”にある。ただし、その先に真の反省や改善がなければ、まるで空っぽの飾り棚に過ぎない。

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