核抑止 - かくよくし
核抑止とは、相手を一瞬で焦土に変える兵器を互いに持ち合い、誰もそのスイッチを押さないことを平和の秘訣と呼ぶ、戦略的社交術である。軍備拡張を回避ではなく誇示と解釈し、無力感を全地球規模のチキンレースに昇華させる奇妙な発明だ。冷戦時代から続くこのデッドロックは、実際には生存本能の裏返しであり、核ミサイルの先端には希望ではなく恐怖がくっついている。互いに「押さない」と約束する平和は、遠くから届く爆撃機の爆音と紙一重で成り立っている。人類史上もっとも危険なパートナーシップは、相手の手を縛り、自分の手も離さない共同作業といえよう。