辛辞苑
ホーム
タグ
カテゴリー
このページについて
ja
#音楽
リメイク - りめいく
リメイクとは、過去の栄光に縋りつき、既存の物語を二度目の産声と称して再披露する芸当である。一度見飽きたはずの世界を、異なる衣装で再登場させ、観客の情熱を再燃させるふりをする。その実態は、創造を放棄し、安心感という名の枷にしがみつく作法に過ぎない。新鮮味の死骸に塗られた栄光の衛生塗装が、その矛盾を際立たせる。
レガート - れがーと
レガートとは、音と音の境界線を溶かし、一縷の息継ぎすら許さない滑らかな嘘を紡ぐ技法である。演奏家はその流麗さで聴衆を魅了するが、実際には指先の緊張と呼吸停止という名の拷問に耐えている。音符間の深い隙間は忘れ去られ、永遠に続くかのような旋律が約束されるが、終わった瞬間の安堵感は戦場のそれに近い。滑らかであるほど、裏に潜む苦悶は深く、静かなる暴虐を感じさせる、芸術の仮面を被った拷問器具である。
レゲエ - れげえ
レゲエとは、暑い日にスローテンポのビートで人々の肩の力を抜くことを使命とする音楽。しかし、その甘美なリズムは商業主義に絡め取られ、いつの間にかフェス会場の爆音ツールに早変わりする。精神の自由を歌い上げながら、広告塔として流行の波に乗り続ける皮肉なリベリオンでもある。伝統のひげ面から流れ出るベースラインは、抗いがたい酔いどれの呪文。最後には誰もがスマホ片手に「いいね」を押し、反逆者もいいねの錬金術に屈する。
レチタティーヴォ - れちたてぃーう゛ぉ
レチタティーヴォとは、物語を語ると言い張るくせに旋律から逃げ回る薄情な音楽上の語り部。または役者と歌手の狭間で揺れる中途半端芸。舞台のドラマを担うくせに、アリアに比べれば地味な普段着で舞台をウロウロし、聴衆には演技力か歌唱力かを選ばせる。音符の羅列を言葉にくっつけただけで演劇的深みを主張し、指揮者には「自由だ!」と言われながら巧妙に自由を奪われる。結局、物語の命綱と称する雰囲気要員として舞台上にひっそり息づくペテン師。
ロック - ろっく
ロックとは、巨大な歪みと共に聴衆の理性を破壊し、心の壁を粉砕する音楽の巨石。社会規範のドアを蹴破り、仲間との無礼講を祝祭の名の下に集約する反抗的シンフォニーである。静寂の安寧を尊ぶ者には騒音でしかないが、退屈を赦さぬ者には救いの賛美歌となる。時には政治よりも雄弁に時代を語り、ファッションよりも激しく自己を表現する。嗚呼、耳鳴りこそが真理の証。
ロマン派音楽 - ろまんはおんがく
ロマン派音楽とは、音楽史の教科書でだけ美化される、情緒過多の音の洪水である。控えめな旋律とは無縁の作曲家が、聴衆の涙腺を狙って音符を積み上げる。愛、死、自然、それ以外に語ることがなくても大太鼓で轟かせればロマンになるという安直さを誇る。普段は控室で『理性? 何それおいしいの?』と嘲笑いながら、ホルンやヴァイオリンを使って壮大な自己顕示欲をまき散らす帝国主義的音楽観。演奏後には、汗と鼻息とともに『感動した』という無数の社交辞令が舞い踊る。
映画音楽 - えいがおんがく
映画音楽とは、スクリーンの行間を埋める感情の塗り絵である。ありとあらゆるシーンにそっと忍び寄り、観客の涙と拍手を著作権料を支払うことなく誘爆させる。登場人物の心情を台詞より雄弁に語り、時に映像を超えたドラマを演出する万能の感動製造機。しかしあまりにも音量を上げ過ぎると、本来の映画そのものがバックダンサーに成り下がる危険性を孕む。無限の和音が連なる迷宮へようこそ。
音階 - おんかい
音階とは、音の高さを分類するという建前の下、人間が自らの歴史的・文化的嗜好に合わせて選び出した音の並び。機能性よりも慣習と伝統が幅を利かせ、時には誰もが気づかないマイナーキーでさえ一張羅のように崇められる。西洋音楽では七つの音程が神聖視され、東洋の五音階では五つの音が秘密結社の暗号のように扱われる。各種音階は、演奏者に無限の創造を約束すると同時に、その枠から一歩でも外れれば不協和音の烙印を押される恐怖も提供する。すなわち、音階とは自由の名を借りた束縛である。
音楽 - おんがく
音楽とは、無関係な振動を組み合わせ、人類が感動すると信じ込む儀式。最新のヒット曲は、数ヶ月後には誰も覚えていない感情の使い捨て品である。聴衆をひとつにまとめる力がある反面、同時に空気のようにそこにいながら存在を忘れさせる。過去の名曲は美化され、未来の新曲は過剰に期待される、無限に繰り返される商業サイクルの中心的存在。
音楽 - おんがく
音楽とはスピーカーやイヤホンを通じて流れる「感情のラジオ体操」である。無数の人々が「感動した」と口にしながら、実際にはプレイリストのシャッフルに人生を委ねる。好きな曲を探す行為は、幸福の在り処を探す精神的宝探しとも言える。終わればまた新たな無限ループへ回帰する、自己満足の円環装置。
音楽結びつき - おんがくむすびつき
音楽結びつきとは、誰も実際には知らないメロディで一体感を演出する魔法の呪文。SNSの再生回数が友情の証とされ、深い対話は再生履歴に置き換わる。共鳴する感情より、共鳴回数が重要視される現代の集団催眠装置。聞き終えた頃には忘れられた承認欲求だけが残る。
音色 - ねいろ
音色とは、音楽家の自己顕示欲を映し出す鏡のような音の色彩。料理のスパイスのように、同じメロディでもひと振りで劇的に味わいを変える。しかし、その残酷なまでの主観性ゆえに、ハイレゾ環境でも手酷い評価を浴びることがある。時にはオーケストラのサウンドチェック直後が、最も純粋に幸福を感じられる瞬間だと言われる。にもかかわらず多くの人は演奏中ではなく、録音後の音色ばかりに目を奪われるという不条理な真理を内包している。
««
«
10
11
12
13
14
»
»»