辛辞苑
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#風呂
バスタブ - ばすたぶ
バスタブとは、水と体重と諸々の疲労を不本意に抱きかかえる、日常という名の牢獄に置かれた水槽である。適度に温められた湯は一瞬の安らぎを与えるが、あくまでも溺れない程度に抑えられる。豪華なバブルやアロマは、自分を甘やかしたいという欲望を満たす代わりに、排水溝という名の現実へと引き戻す。その隙間には、無言の自己反省と貴重な逃避願望が漂う。身を沈めるたびに、心の澱がほんの少しだけ浮き上がるのだ。
入浴 - にゅうよく
入浴とは、水と湯によって体の垢を落とす儀式と称し、実際には心の垢を放置して自己満足に耽る時間である。石鹸の泡が身体を包むその瞬間だけは、世間の煩わしさが溶ける気分になるが、湯船を出るとすぐに再び溺れかける。文明の利器である追い焚き機能は、結局は無限ループを生むだけの怪物として君臨する。時にはスマートスピーカー越しに垂れ流すプレイリストが、真の入浴の敵である。せめて湯気に紛れて、現実の音を消すだけの望みを抱かせる小さな逃避行。毎日の単調な行為が、すべては「清潔」という社会的契約のための魔術であることを、我々は深く忘れている。